現在、航空機産業はCO2の削減、燃費の向上を目指した電動化、新しい空のモビリティとしての無人航空機や空飛ぶクルマといったパラダイムシフトの時代を迎えています。この激動の時期を乗り切るために、ステレオタイプの技術から新しい技術へのシフトが求められています。私たちは、これまでに培ってきた民間航空機の認証技術とソフトウェア開発技術を用いて、お客様とともにこれらの新しい技術課題に取り組み、パラダイムシフトの先にある未来の航空機産業を支える技術を共有します。
無人航空機の認証
無人航空機の認証に関わる制度設計は現在、欧米、日本国内において議論されていますが、これまでの民間航空機の認証システムをそのまま適用することはできないでしょう。例えば、安全性評価(Safety Assessment)に関しては、民間航空機で適用されているSAE ARP4761は、主に搭乗者(乗客、乗員)の安全をいかに担保するかに焦点が当てられています。一方で、無人航空機はその名の通り搭乗者はおらず、地上の第三者、建物の安全をいかに担保するかを考えなければなりません。当然、安全性評価のやり方も全く異なってくるでしょう。
ソフトウェア開発に関してはどうでしょうか。高額な民間航空機と比較してかなり安価な無人航空機に対して、同じレベルでRTCA DO-178Cを適用させるのは現実的ではありません。小型の無人航空機向けにASTM F3201-16があります。F3201はポイントを押さえた良くできたガイドラインではありますが、具体性に欠けるところがあります。そこで、私たちは、F3201にDO-178Cの考え方を一部取り入れた新しいガイドライン(MOC : Means Of Compliance)を提案したいと思います。
SAE ARP4761 Guidelines and Methods for Conducting the Safety Assessment Process on Civil Airborne Systems and Equipment
ASTM F3201-16 Standard Practice for Ensuring Dependability of Software Used in Unmanned Aircraft Systems (UAS)
RTCA DO-178C Software Considerations in Airborne Systems and Equipment Certification
Artificial Intelligence
航空機にAIを搭載することについては、現時点で多くの技術的な課題があり、現在、欧米では、SAEがG-34、EUROCAEがW-114のワーキンググループを立ち上げて、活発に議論が行われています。しかしながら、日本国内ではまだまだ議論する域に達していない状況にあります。一方で、無人航空機には有視界外での自動操縦が求められ、また、上空高く飛行する航空機と比べて人や建物の近くを飛ぶことから高い画像認識技術も求められています。これらの状況から、近い将来、AIの搭載を現実的なものとして考える時が来るに違いありません。欧米に遅れをとることなく、日本国内でも研究開発の場が求められます。
SEA International G-34 Artificial Intelligence in Aviation
EUROCAE W-114 Artificial Intelligence
Formal Methods
RTCA DO-178がC改定された際に、最新技術を民間航空機搭載ソフトウェア開発に取り入れた場合に守るべきいくつかのガイドラインが制定されました。Formal Methodsに関してはRTCA DO-333がそのガイドラインとして制定されました。Formal Methodsというと研究レベルでは盛んだが実際のソフトウェア開発ではまだまだと思われがちですが、様々な分野で、特に高い安全性が求められる分野で適用が進んでいます。欧米におけるAIの議論の中でも、AIの検証をFormal Methodsを用いて実施することが提案されています。
RTCA DO-178C Software Considerations in Airborne Systems and Equipment Certification
RTCA DO-333 Formal Methods Supplement to DO-178C and DO-278A
Security
民間航空機のセキュリティを保証するためにRTCAが以下の3つのガイドラインを発行しています。現時点でFAAはAdvisory Circular等を通してこれらのガイドラインの適用を定めてはいませんが、近い将来、これらのガイドラインがセキュリティに関するMOC(Means Of Compliance)のひとつとして示されると言われています。このような状況で、日本においても喫緊の技術課題として、これらのガイドラインを用いて耐空性セキュリティプロセスを確立する必要があります。また、RTCAではSpecial Committee SC-216を継続して開催中であり、これらのガイドラインについて議論が為されている状況にあります。このような場で日本の考え方を提案するような活動ができればと思っております。
また、無人航空機においては、外部とのインターフェースを多く持つと言う特性上からセキュリティ対策が課題として挙げられており、ここに挙げたガイドラインをどのように無人航空機のセキュリティプロセスに適用するかも技術課題として挙げることができます。
RTCA DO-326A Airworthiness Security Process Specifications
RTCA DO-356A Airworthiness Security Methods and Considerations
RTCA DO-355 Information Security Guidance for Continuing Airworthiness
RTCA SC-216 Aeronautical Systems Security