認証技術に関連する情報の公開

International Aviation Software Summit 2021 #1

RTCAとEUROCAEが共同で、2021年6月23日、24日に開催したInternational Aviation Software Summit 2021に参加しましたので、何回かに分けてその内容を報告したいと思います。今回は第1回として6月23日9:00-10:00(米国東部時間)に行われたOpening Sessionについてです。

Opening Session: A Fireside Chat with Ali Bahrami, FAA and Patrick Ky, EASA

SPEAKER

  • FAA Ali Bahrami氏
  • RTCA Terry McVenes氏
  • EASA Patrick Ky氏
  • EUROCAE Christian Schleifer-Heingartner氏

内容

RTCAのTerry氏とEUROCAEのChristian氏が聴衆の質問をFAAのAli氏、EASAのPatrick氏に投げかけたのち、ディスカッションする形式で行われました。

冒頭、Patrick氏とAli氏から次のOpening Talkがありました。
Patrick氏:現在、ソフトウェアの認証に当たり、当局はチャレンジングな局面に立たされている。AIに加えてAgile、Lean、DevOpsと言った新しいソフトウェア技術に対応していかなければならない。
Ali氏:無人航空機と言う先進的なエアモビリティで起きている、小さな自律したビークルからイノベーションが広がっている。このAIにどう今後対応していくかが課題であり、EASAが2020年2月に制定したAI roadmap 1.0を受け入れたい。

聴衆が、「DO-178Cに今後何が必要か」というアンケートに、「AIのような新しい技術を受け入れるようにアップデートする必要がある」と回答したことに対して
Patrick氏:AIのみならず、Agile、Lean、DepOpsに対応する必要がある。これらはこれまで築いてきた認証のやり方と一線を画しておりが、航空機の分野でも現実味を帯びたものとなってきており、早急の対応が必要である。

聴衆から「低リスクの機体用の簡易的なバージョンのDO-178Cが必要なのでは」という回答に対して
Patrick氏:ドローンやE-VTOL機には異なる安全要求があり、これらの低リスクの機体にはDO-178を適用する必要はないだろう。一方、air taxiの開発はDO-178に準拠して開発されるべきであろう(多分自論)。これからは、幅広いscalabilityが必要であり、これらの新しい機体の開発者は新しいスタンダードをevolutionするkey driverとなるだろう。risk based safety assessmentを行い、リスクレベルに応じたsoftware development assuranceが必要である。その意味で100kg、200kgの無人航空機が多くの人の上空を飛ぶ場合はDO-178CのレベルCを課したい(多分自論)。
Ali氏:一番に考えないといけないことは「安全(safety)」ではあるが、スタンダードやMOC(Means Of Compliance)がイノベーションと成長を阻害してはいけない(認証当局としてのジレンマがあるように見受けられました)。Performance Basedなガイドラインを作る必要があり、global harmonizationで有識者とともに考えていきたい。

続いてCyber Securityについてどう考えているかと問われて
Patrick氏:まずは組織レベルでのセキュリティプロセス作りから始める必要がある。航空機産業に関わるサプライチェーンに参加する全ての企業でCyber Security Risk Management Systemを構築する必要がある。次に、Cyber Securityから何を守り、どんなスタンダードが必要となるかだ。この様なイノベーションに対して産業界は認証当局の先をいっている、産業界がスタンダードを作り、認証当局がルール化するシンクロナイズが必要である。

所感

FAAもEASAも新しいイノベーションに対して多くのジレンマがあるように感じました。Ali氏が言っていたように安全を守る立場ではあるが、イノベーションを阻害してはいけないという思いもあり困惑していることが見てわかりました。AIや無人航空機だけでなく、既にDO-326AやDO-356Aと言ったガイドラインができているCyber Securityに関してもまだ認証当局としてどのようなルールを制定すべきか逡巡しているようでした。現にFAAは、まだCyber Securityに関するCFR(Code of Federal Regulation)やAC(Advisory Circular)を発行しておりません。
そんな中でこれらのイノベーションに対応するには、産業界とうまく連携していくことが大切だという思いが感じ取られました。産業界の代表としてのRTCA/EUROCAEと、認証当局であるFAA/EASA間で強い絆があることも感じられました。
このセッションの最後にRTCAのTerry氏からFAAのAli氏が次の週にリタイアすることが告げられ、Terry氏からAli氏に10年以上の一緒に仕事してきたことを大変感謝する温かい言葉がかけられました。ここからもFAAとRTCAの間に良好な関係が築かれていることを窺い知ることができました。日本においてもこのような良好な関係が築けることを期待したいです。(各務)

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